第14回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品
二次審査員の寸評(応募順)
どこにでもいる夫婦
いくつかの事象が絡み、ノアール的な雰囲気が漂っている。
いくつかの事象は重層的に動き出し、不思議な物語となっている。
作品に出てくる夫婦の行動は過剰にも思えるが、それぞれの気持ちは「どこにでもいる夫婦」のそれがよく表現されている。妻自身が精神的な病に侵されていることに気づいているのかいないのか、ラストに余韻が残っているのもいい。
阿蘇に流星
少年の成長物語と阿蘇の空気感が相まってさわやかな印象。
その分、最後の二つのセリフが日常的すぎて、物足りなく感じた。
忍、一馬、ゼロの三者それぞれにドラマがある設定なので、もっと馬の「ゼロ」の存在感があると関係性が深まりそう。
蘇った男
家電製品や家財道具、はては履歴書まで男に話しかけてくる。それぞれのモノが上から言ってるのが良いですね。この設定も新しくはないが、セリフのセンスが良いので、読みやすいし、付喪神を無視した感じも良い。南のシナリオ応募作にほとんど見ないタイプの作品だが、サラッと読めて、なんか良いなと思える作品。
この「なんか良いと思える」作品て、案外少ない。
バースデイ
設定自体に目新しさは無いが、工夫は見える。最初はもっともらしく一般論を述べていた弟が、次第に子供っぽくなっていくのもその一つか。
終盤に気になるセリフがあって、それもこの作品を残した理由。
時々、自分の娘に、こんなオヤジの元に生まれて、かわいそうな子やと思うことがあるが、ひょっとして、自ら選んでこのオヤジの元に生まれたのかもと思うと、もうちょっと真面目に仕事せんといかんなあと、私に思わせたのも、残した理由の一つ。
墓参り代行
人物の関係が会話の中で分かりやすく整理されている。
仕事で他人の墓参りをするときは心を開放して話せるが、いざ父の墓参りに行くとうまく話せない、そして話したかった言葉とは……という展開が好印象だった。
ほてぱき
ダントツで面白い! そして泣ける! ほてぱき最高!
ご祝儀の相場って?
女性の勢いを出し切った作品。男に逃げられた女が結婚式で復讐する。痛快な物語だ。
青いさくらは散りぬるを
書き慣れた筆運びできれいにまとまった正統派の作品です。廃止になった列車の使い方など巧みです。ただきれいにまとまりすぎて、作品が小さく納まって、面白みに欠ける印象です。Mの言葉が、主人公の性格もあるのでしょうが、固すぎるように感じます。
月の石の指輪
月にいくロケットからのプロポーズ。ダイヤモンドよりも月の石。なんだかロマンチック作品だ。
男女二人の電話ごしの会話だけでどんどん展開していくテンポが良い。
冷やし中華を作る台所と、月に飛び立つロケットの対比、そして男女のキャラクターの対比が面白い。楽しかったけれど、ドラマというよりコント的な印象が残る。
いつか、きっと
「湧水」を主人公にして、その父母がいて、娘に恋をする。昔話のような設定ですが、かみ合わない互いの台詞の作り方も上手く面白い作品でした。時々、説明台詞が出てきて残念。山場の、石を転がして娘を助けるシーンをもう一工夫して欲しかった。
不知火
地名でも聞くし、個人的には仕事でも行く土地だが、この名前だけで関心を引く。
まず、同じ場面で移動もなく、登場人物も2名のみというのが個人的に好きな設定。
応募作に恋愛ものは多く、パターン化されたものがほとんどだが、この作品は別格。セリフもこなれていて二人の微妙な距離感がしっかり伝わってくる。文体や全体の物悲しい雰囲気、モヤモヤした終わり方からも、私は、質の高いハードボイルド作品と位置付けたい。
しかし、この男の方は、ただの自己満足で好き勝手して、ろくでもない輩だと思うのは、私だけかな。
無音の伴奏
物語性があって、魅力的な作品だと思いました。ただ、書式が正確でなく、正しく行を空けると規定の枚数を超えてしまうのではないでしょうか? 十分削れる台詞もあるので、推敲すると、規定内のいい作品になると思います。一つ、高校生の男の子の台詞をもっと活き活きと描けたら更によくなると思います。
グッドラック
作者名が書かれていましたが、審査しました。
重くなりがちなテーマを軽やかにまとめたところに好感。
対等な目線で「頑張れ」ではなく、「グッドラック!」のラストがいい。
以上、13編