第9回 南のシナリオ大賞 結果発表

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南のシナリオ大賞「言霊のエール」(配信中)

第9回南のシナリオ大賞 結果発表

南のシナリオ大賞 (副賞 5万円)
「15歳のカノジョ」 岡庭哲子 (東京都)

福岡県知事賞
「嘘つき岳」 大杉誠志郎 (長崎県)

福岡市長賞
「孫をこうのとりに返した男」 高岸誠二 (熊本県)

佳作3編
「十五分後の世界まで」 岡崎優子 (茨城県)
「レペゼン九州」 徳永惠介 (東京都)
「カフェ・コトリ」 日高真理子 (福岡県)

一次選考通過作品
「雨碁」 高岸誠二(熊本県)
「桜ひらひら」 加納ふうこ(大分市)
「五ヶ瀬川奇譚」 荻 利行(東京都)
「海の家『おきなわ』」 狩屋江美(東京都)
「ブーケトス・バトル」 芳賀淑美(千葉県)
「木の万華鏡」 横田久美(徳島県)
「最終面接」 遠藤大輔(東京都)
「佐賀県道32伊万里畑川内厳木線」 遠藤大輔(東京都)
「夕映えの時」 たまち夏子(福岡県)
「幸せのカタチ」 中尾吉文(佐賀県)
「雨女とアメ男」 岩本憲嗣(東京都)
「葛藤」 鷹 喬一郎(大阪府)
「荷拵え」 遠藤大輔(東京都)
「すりきれジジイ」 板津桂子(兵庫県)
「毎日が恋の初まり」 工藤正明(東京都)
「みせるべさん」 連野 潤(神奈川県)
「真冬の水着の跡」 浅田佳子(東京都)
「幸せの魔法使い」 和田暁知(東京都)
「Malfunction マルファンクション」 ねこてぱんち(茨城県)
「真に受けて」 中村弘文(福岡県)
「僕が撮った写真」 吉田裕美(大阪府)
「アーティストハウス」 たまち夏子(福岡県)
「思い出は消えない」 森田後生(東京都)
「黒い声」 松岡千恵(福岡県)
「夏椿」 琴川紘音(埼玉県)
「最低な一日」 亀岡哲郎(東京都)
「恋の好敵手」 山口亜紀(東京都)
「神様はお見通し」 高畑悠未(東京都)
「人魚のうろこ」 恒松千穂(福岡県)
「およげない」 深海あいこ(福岡県)
「汽車に乗って」 柿沼伸良(広島県)
「小さい先生」 安東茂光(東京都)
「シャンプー」 中庭順子(千葉県)
「魔界の木」 舘 利恵(富山県)
「博多めんたいジャズ」 溝呂木美希子(東京都)
「夜の虫」 池崎彩子(長崎県)
「最後の晩餐」 青木ドナウ(福岡市)
「ロウソクに願いを込めて」 與那嶺朝子(沖縄県)
「せにゃんたい」 安藤うな(神奈川県)
「人間の鳴き声」 千野 晶(神奈川県)
「マリアのチカラ」 武井さち(兵庫県)
「最後のファン」 こたつめがね(東京都)
「蛍火」 大谷えり子(名古屋市)
「こうのとり」 梶田明子(愛知県)
「あいすくりんと戦闘機」 ささくらら(千葉県)
「シワの温もり」 荒木ひさみ(千葉県)
「ぽっかりと、月が浮かんで」 丹羽惠子(新潟県)
「おばあちゃんの記し」 八田明子(神奈川県)
「地獄」 川越光輔(熊本県)
「リンドウの花」 大川徳子(千葉県)
「髪結いの恋」 井上美穂(東京都)
「Silver/Slow/Trip」 小野慶子(兵庫県)

応募総数:171編(2015年8月31日締め切り)

文化庁「九州・沖縄から文化力プロジェクト」参加事業
後援:福岡県、福岡市、日本脚本家連盟九州支部
主催:日本放送作家協会九州支部

選考会
2015年10月17日、福岡市中央区大名
審査委員: 盛多直隆、副島 直、皆田和行、香月 隆
実行委員: 甲斐智子

南のシナリオ大賞 「15歳のカノジョ」 岡庭哲子

写真 南のシナリオ大賞 岡庭哲子氏受賞者のことば

岡庭哲子(東京都)
「私に書かせりゃ損はさせない!」とか勘違いしていたあの頃(かなり昔)が、今思えば旬だったのかも。旬を逃してドツボにハマってからの日々は延々々々と続き……。
ワタシのダメダメ人生はいつまで経っても結局ダメで、「なんなんだろう」とウツに陥る時があります。友達の活躍を妬むと病が酷くなる。まさに、この作品の主人公はそんなワタシです。
でも大賞頂けたし! 勘違いオバサンと呼ばれてもいいんだ。これからもへこたれずに書く!

「15歳のカノジョ」 あらすじ
会社をズル休みして、ファミレスで3日と半日を過ごしているリキコ(38)。ワインと骨付きチキンのカラ揚げだけをひたすら食し続けている。親友の成功を妬んだことで、人生に嫌気がさしたのだった。そんなリキコの前に現れた五郎(25)は、とても馴れ馴れしい。
ところが、五郎はリキコの初恋の相手だった。15歳で恋をした相手だが、五郎が結婚したことで、リキコの片想いは終わった。
38歳の自分の前に現れた25歳のままの五郎は、2歳年上の女性との結婚についての相談を始める。その話の中で、実は15歳の少女に惹かれ、結婚を迷っているのだと言い、話を聞けば、その少女の姿はまさしく昔のリキコ像そのものなのであった。
不思議な体験を通して、リキコは何だか人生が楽しくなるのだった。

福岡県知事賞 「嘘つき岳」 大杉誠志郎

写真 福岡県知事賞 大杉誠志郎氏受賞者のことば

大杉誠志郎(長崎県)
1次審査に通らなかった作品は郵便局の誤配で原稿が届かなかったのだと思うようにしてました。己の実力不足を認めたくなく、そう思うことで心の安定を保っていたのです。だけどそれでは割に合わない。こう思うようにしました。作品に注ぎ込んだ労力はきっと頭の中のシナリオ細胞を鍛えている。没になっても経験値は貯まると。その蓄えでいつか自分でも震える程の作品を生み出したいと思います。選んでくださり有難うございます。

「嘘つき岳」 あらすじ
近藤岳(24)は末期癌を患う母、近藤美津子(58)に癌に効能があるという水を売っていた。
しかし、それはただの水道水。それを知った岳の姉、近藤ハル(27)は岳を責める。しかし、美津子はその水道水を飲むたび元気になっている様で、この水のおかげだと崇めるほどだった。岳はこのまま美津子が癌を克服するのではないかと期待を抱く。
しかし、美津子はその後あっけなく亡くなる。
死後、遺品を整理している時だった。床下に手つかずの水のペットボトルが大量に出てきた。美津子は水を飲んでいるフリをしていたのだった。わざと騙され水道水が効いてるフリをして岳の嘘に嘘で応えていたのだった。
嘘が大嫌いな美津子が初めてついた嘘なのかもしれない。

福岡市長賞 「孫をこうのとりに返した男」 高岸誠二

写真 福岡市長賞 高岸誠二氏受賞者のことば

高岸誠二(熊本県)
私はあきらめの悪い人間らしい。いや、ただ鈍感なだけなのか? 何度、落選を繰り返しても書くことをやめようとは思わなかったから。それでも気がつけば、とうに五十を過ぎて、目の前には老後という不安な未来が待ち構えていた。

幕引きも近いはずだった。

それが今回、市長賞をいただけるという。まさかこんな日がやって来るとは……。受賞コメントを書いている自分が、今だに信じられない。本当にありがたい。感謝、感謝です。

*注: 高岸誠二さんの「高」は、正しくは「はしごだか」ですが、ネット環境によっては文字化けとなる可能性があるため、高岸さんのご了解を得て、汎用文字に置き換えて表記しています。

「孫をこうのとりに返した男」 あらすじ
杉村は熊本に孫の有沙を連れてやって来た。ただ、その目的は一風変わったものだった。
早朝、杉村は有沙を熊本の病院に設置された、「こうのとりのゆりかご」に預けた。有沙は泣き叫んだが、彼は空のベビーカーを押して逃げるようにその場をあとにした。
杉村は近くの公園で呆然と時を過ごした。そんな杉村にセーラー服姿の女子高生、絵理が話しかけてくる。絵理は明るく屈託のない様子で、タクシー代をせびった。一喝して断った杉村に、絵理は、「赤ちゃんポスト」を見に来たと言う。望まない妊娠をした友だちに代わって、病院の様子を見に来たのだ、と。絵理は公園を出て行こうとして、嘔吐する。妊娠していたのは、絵理本人だった。
杉村は絵理に娘の朋美のことを話した。朋美は父親の分からない子供を産むと、その赤ん坊を杉村に預けて新しい男と出奔していた。朋美のことを悪く言う杉村に、絵理は、「娘さんに電話してみたら?」と勧める。杉村は、娘は孫を置いて家を出て行ったあと、交通事故で死んだ、と告げた。絵理は、「私が娘さんのふりをして、電話してあげる。オジさんも私のお父さんのふりをして受け答えをしてよ」と提案した。
気乗りのしない杉村だったが、公園の離れた場所で、二人は電話で話し始めた。絵理は本当の父親に話すように自分のことを話した。杉村も次第に娘の朋美と話しているような錯覚に襲われていった。「お父さん、赤ちゃんを育ててくれてありがとう」朋美に成り代わってそう話す絵理に、杉村はこらえきれずに、孫を「こうのとりのゆりかご」に預けたと白状した。「オジさんは自分勝手な人だ」と絵理は言って、電話を切ると公園を出ていこうとした。杉村は引きとめようとしたが、「こっちに来ないで!」と絵理は叫んで、去った。
「それは朋美との二度目の、そして永遠の別れのような気がした」と杉村は思った。

9回目の感謝と叱咤激励!

副島 直(審査員)

第9回南のシナリオ大賞には、全国より 171編の作品が寄せられました。
多くのシナリオコンクールが催されているなか、ラジオドラマの脚本、しかも15分の短編という、他にない特異なスタイルの創作に挑戦されたすべての応募者に、その情熱と尽力に敬意を表し、この場にて惜しみない拍手をおくります。

最終選考に残った作品は、以下の13編(応募順)。

「嘘つき岳」「夕映えの時」「十五分後の世界まで」「Malfunction マルファンクション」「15歳のカノジョ」「小さい先生」「カフェ・コトリ」「せにゃんたい」「人間の鳴き声」「レペゼン九州」「孫をこうのとりに返した男」「ぽっかりと、月が浮かんで」「リンドウの花」

いずれも安定したテクニックで書かれており、方向性を同じにするプロデューサーやディレクターと組めば、いますぐにでもデビューできる技量を身につけていらっしゃる方ばかりのように感じられました。

大賞受賞の「15歳のカノジョ」は、24時間営業のファミレスに居残り、三日三晩チキンを食べワインを飲んでいる主人公の人物設定がユニーク。さらに彼女の前に現れた若い男と、過去の因縁が明らかになっていく過程、主人公の感情の変化など、聞き手のイメージを刺激させる、ラジオドラマらしいファンタジーでした。あえて合理的な説明をしないままストーリーを終わらせたことで、不思議な世界が生まれています。

県知事賞の「嘘つき岳」は、息子から母親へ、母親から息子への双方向の思いやりが丁寧に描かれ、そこに「嘘つき」という捻りが、ストーリーやテーマと上手く噛み合って評価されました。誕生日のバナナカステラとか、(*)生活感の滲んだディテールが好印象の作品です。

* バナナカステラは「嘘つき岳」には出てきません。お詫びして訂正します。(2015/11/21)

市長賞受賞の「孫をこうのとりに返した男」は、アクチュアルな題材をモチーフにした社会性の強い作品でしたが、作者はメッセージを声高にアジるのではなく、個人レベルの狭い情景のなかで淡々と悲劇を描きました。初老の男と女子高生が交わす携帯電話の会話は、すこぶる切ない。女子高生が去った後、公園にポツンと独り残された主人公をそのまま置き去りにした冷静なラストに、作者の確固たるスタンドポイントが感じられます。

佳作「カフェ・コトリ」は、雨の午後の喫茶店を舞台に、優しく心地よい雰囲気が醸された、風情のある恋愛ドラマでした。登場人物が善良な人ばかりで心が洗われます。失明した男を主人公にしたほうがラジオ的で、ドラマのうねりも大きくなったと思います。

佳作「レペゼン九州」は、混血少年のアイデンティティやナショナリズムの苦悩を描いた作品で、後半ラッパーを登場させたのがラジオ的で新鮮でした。ただ、MCと短い時間お喋りしただけで問題解消させてしまう展開は安直過ぎて消化不足。作者はこのテーマともっと真剣に向き合って、対決する姿勢で執筆に臨んでいただきたかった。

今回の最終選考でもっともラジオドラマ的な題材を扱っていたのが、佳作「十五分後の世界まで」でした。状況認識が出来ない暗闇に唐突に放り込まれる主人公の不安と恐怖、日常レベルの感覚で戦争の不条理が描かれ、シュールなリアリズムに昇華されていました。ドラマの進行とシンクロナイズされた15分後のタイムリミット設定、次第に近づいてくる爆音のサスペンス効果。古典的な手法ではありますが、時間経過に密着したストーリー構成は見事です。
残念なことに、クライマックス後の風呂敷のたたみ方が杜撰でした。ラスト次第でとんでもない作品に化けていたかも知れません。あと私の個人的な嗜好ですが、主人公に語りかけてくる声は、女の子のほうが良かったように思います。
他の審査員の票は集まりませんでしたが、私は高く評価し、佳作にねじ込みました。現代の若者をタイムスリップで戦争体験させる安易な手法の作品よりも、戦争の不条理性がよりリアルに伝わってきます。この不条理な状況に幻想味をプラスしたラジオドラマ作品を読みたいのでぜひ書いてください。期待大です。

入選には至りませんでしたが、「小さい先生」と「せにゃんたい」は私の琴線に触れた2作品でした。

「小さい先生」は、方言のモノローグに温かみがあり、感動的なストーリーによくマッチしていて好感が持てました。しかしながら、文盲の老母が文字を覚え、疎遠になっている息子に稚拙ながらも手紙を綴るというストーリーは、野口英世の母親シカの話をはじめ、過去幾度となく小説・映画・ドラマ・漫画で描かれてきたもので、あまりにも古臭い。文字を教えるのが新聞配達の少年というのが新味ですが、二人のやりとりをここまで丁寧に描かれたのですから、作者は優れた技量をお持ちだと思います。次はオリジナルなストーリーで挑戦してください。

「せにゃんたい」は、遊女の友情話におてもやん由来を巧妙に絡め、快調なテンポで語った作品。地方(熊本)の時代色がよく出ていて、場面転換にも工夫があり、導入部からうまいと感心させられました。随所に音曲を交えたり娯楽性も充分で、とてもアマチュアの脚本とは思えないほど熟れています。しかしながら、15分のラジオドラマとしては登場人物が多く、人間関係が把握しにくい。全体的に煩雑な印象となってしまったのが残念です。これが60分のテレビドラマ脚本だったら、女優志望のアイドル・タレントを使って作品化に名乗りを上げるプロデューサーがいるかも知れません。

今回13本の最終候補作品を読ませていただきましたが、半数以上がラジオドラマでなくても描ける内容で、テレビドラマ向きの題材をむりやりラジオ脚本に置き換えているような窮屈さを覚えました。
いっぽう、題材(ネタ)は多様化しており、数年前までの「最終選考には似たような作品ばかり並ぶ」といった審査員の不満は聞かれなくなりました。
(たぶん)南のシナリオ大賞は、進化しているのでしょう。

来年はどんな進化がみられるのか、それだけを楽しみに(もう少しだけ)生きてみようかな、とか思ったりしております。

第9回南のシナリオ大賞受賞作品(ドラマとシナリオ)の
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