第4回南のシナリオ大賞 結果発表
南のシナリオ大賞 (副賞 5万円)
「屋根の上のシーサー」 鵜飼広計 (さいたま市)
福岡県知事賞 (副賞 楯)
「とりあえず」 今城晋子 (東京都中央区)
福岡市長賞 (副賞 楯)
「喫茶犬」 本山久美子 (福岡市中央区)
佳作3編
「朗読の仕事」 柳 光博 (広島市)
「ドライガール」 宮本昌和 (京都府長岡京市)
「高崎家の嫁」 山崎雅悟 (東京都足立区)
一次選考通過作品
「ゴーウエスト!」 木村よしこ (東京都世田谷区)
「引きとり手のない遺体」 西木友世 (福岡市中央区)
「糖度13の愛」 林 日里 (福岡県田川市)
「想い川」 二条ゆみ (東京都世田谷区)
「中年の衝動は俺が動かす」 長谷部 楓・丹瀬 遥(大分県日田市)
「城の下の縁の下」 荒木ひさみ (千葉市)
「離れ」 西野 裕 (埼玉県越谷市)
「ふた夜帰りのイキタ」 時乃真帆 (東京都大田区)
「アマテラス降臨」 木戸美江 (東京都武蔵野市)
応募総数:75編(2010年8月31日締め切り)
文化庁「九州・沖縄から文化力プロジェクト」参加事業
後援:福岡県、福岡市
主催:日本放送作家協会九州支部
最終選考会
2010年10月10日、福岡市中央区天神の天神エコール
審査委員: 盛多直隆、皆田和行、舟越 節、副島 直、香月 隆
「南のシナリオ大賞」によせて
日本放送作家協会 会長
市川森一
むかしから、九州一円には御霊を引き寄せる磁場が各所に存在します。
九州では、そんな不思議な磁力を体感した人が多い筈です。
想像力の源は霊力だ、と言ったのはヘーゲルですが、それならば、霊力の磁場の中にいる九州人はみんな作家だ、と私は思います。
この機会に、ぜひあなたの霊力をご披露ください。
そういう私も、もちろん九州人です。
第4回南のシナリオ大賞 表彰式
日時:11月28日(日)15:00~17:00 場所:KBC会館

表彰式列席者(敬称略)
受賞者
鵜飼広計(南のシナリオ大賞受賞)
本山久美子(福岡市長賞受賞)
ゲスト
鵜飼広計さんの奥様
花野純子(「映画脚本塾」講師・演出家)
花野孝史(「映画脚本塾」講師・演出家)
本田明子(第3回南のシナリオ大賞受賞)
横葉紫彦(第3回福岡県知事賞受賞)
小林葉子(第3回福岡市長賞受賞)
日本放送作家協会九州支部
舟越節、阿部正春、盛多直隆、副島直、篠原敬子、香月隆
大賞受賞の鵜飼広計氏は奥様ご同伴で出席。市長賞受賞の本山久美子氏が通われている「映画脚本塾」講師の花野孝史・純子ご夫妻、昨年度の南のシナリオ大賞受賞者3名もお祝いに参加。賞状授与と審査員講評のあとは受賞者の方の緊張もほぐれ、今年度はたいへん賑やかな授賞式となりました。
主催者側からは支部会員6名が出席。
司会進行役は、放作協九州支部の篠原敬子氏。
表彰式終了後は、アークホテル博多のレストラン花水木に会場を移して懇親会を開催。和気藹々な雰囲気のなか、新しいドラマの担い手たちとベテラン作家による、和やかな会話が交わされていました。
南のシナリオ大賞 「屋根の上のシーサー」 鵜飼広計
受賞者のことば
鵜飼広計(さいたま市)
一念発起して、昨年からシナリオに再挑戦しています。とくに、若いときにはあまり解らなかったオーディオ・ドラマの魅力にハマッているところです。音だけで表現するドラマの世界には、いつも奥深さと難しさを感じます。たいへん光栄な賞をいただき、身が引き締まる思いです。本当にありがとうございました。
選評
携帯依存症のため沖縄に島流しされた女の子と、重病に冒され作品をすべて破棄処分してしまった陶芸家との交流を描いたハートウォーミングなストーリー。
女の子の現代的なお喋りと陶芸家の琉球言葉がうまくブレンドし、読んでいてたいへん気持ちが良い。パターンどおりのストーリー展開と予定調和な結末ではあるものの、二人の性格がしっかり描き込まれているので最後まで飽きさせない。今回応募された類似作品のなかでは群を抜いて完成度が高く、作者の筆力が充分に感じられる。明るく爽やかな読後感が支持されての大賞受賞。作家としてのオリジナルな視座を養い、さらに飛躍されることを期待します。
福岡県知事賞 「とりあえず」 今城晋子
受賞者のことば
今城晋子(東京都中央区)
以前、仕事を休んで屋久島へ行きました。歩きながら寝てしまうほど疲れていた私に、屋久島の空気は元気をくれました。今回の作品は、その思い出と、家族や九州出身の友人に聞いた話が元になっています。
思い出のある九州のドラマで賞をいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございました。
選評
職場に疲れはてて屋久島へツアーした会社員の佳織が、ツアーガイドの心にふれてリフレッシュするという、心の旅ドラマ。主人公が自殺するかもしれないというかすかなスリルを漂わせながら、ストーリーは展開していく。ガラス細工のような佳織を見守ってくれたのは、島の女でツアーガイドの里美だった。二人は同じ年、ともに女の厄年。お互いに共感と反感を覚えながら屋久杉の森を歩く。そしてとりあえず生きている小杉の姿に二人は不思議な感動を覚える。
普通の人生を都会の目から、島の目から、しみじみみつめて過不足なく生の疲れを描いて見せた上質な佳品。生の陰影を静かに描く力量を評価して私はこの作品に最高点を入れた。
福岡市長賞 「喫茶犬」 本山久美子
受賞者のことば
本山久美子(福岡市中央区)
この「喫茶犬」は「飼われている犬」という存在を描きたいと思い書いたものです。音声のみという枷は想像力がかき立てられるいい経験でした。今後も機会があればラジオドラマに挑戦したいと思っています。ちなみに勝手な妄想テーマソングは高田渡の「♪ホントはみんな」です。
ありがとうございました。
選評
物語はこうである。主人公の老犬小太郎は、老人マスターが経営する喫茶店の看板犬。しかしマスターが小太郎を置いて老人ホームへ入所することになった。憤然とした小太郎は喫茶店を後にして流浪の旅へ。落ち着いた先は、犬好き人間の相手をしていれば食事も寝床も困らないという「犬カフェ」。しかしへそ曲がり小太郎は何かを求めて犬カフェからも失踪する……。というような「我輩は猫」のお犬版ドラマ。
音響効果の使い方に難があり、このままではドラマ化に問題があるが、それでもこの作品には捨てがたい魅力がある。老犬小太郎が持つ尊厳。今の私たちに一番ないものを喫茶犬が持っていた。老への諧謔を軽妙なタッチで描いてみせたファルス。レーゼドラマとして読んでほしい。