第11回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品
ラクダが飛んだ日
小島老人のキャラが面白い。セリフの流れだけで読ませる。セリフは巧いのだが、どこにテーマがあるのか掴めない。冒頭の老人芝居をやっている母娘はいらないのでは?
風の向こうに見える君
遊園地のアトラクションを擬人化した話で、ローラーコースターに想いを寄せる観覧車のラブストーリーという奇抜な設定が刺激的。派手な効果音が満載。登場人物が(人ではないが)普通の人名で呼び合っているし、そこに事故の被害者が絡むと、ますます話が分かりづらい。タイトルが平凡だし、結局なにをやりたかったのか分からない。
フェイクファーザー
結婚式当日のそれも直前に、突然6年ぶりに現れた父親。その父親のキャラが面白い。物語のテンポも良く、レンタルの父親と、本物の父親が芝居仲間であったという設定も納得できる。ラストの短い会話に父・娘の愛を感じる。
池の鯉
ファンタジーであるが最初に鯉のクロがきちんと状況説明をしているので、スーと物語の中に入り込める。理不尽な戦争、それで死んだ者、生き残った者、それぞれの想いが交錯するが、こんな形で72年前の戦争を伝えるのも有りだと思う。
貯禁箱
硬貨を擬人化させるドラマ。ヒントが高感度。女性とお金の硬貨達との会話が長いのが難点か・・・。
無心の水槽
近未来的な水族館で職員と、娘を探す母の絡みが面白い。イルカに娘の脳を移植、その後母にも。再会の感動。
たまてばこを探して
15枚の短い中で物語性のあるドラマがうまく展開されている。ただ「玉手箱」に色々な要素や縛りをつけすぎ、更に「浦島伝説」を絡めようとして処理仕切れてないのでは?箱を開けない前提ならば女主人は自分の手紙が入っている箱を捜すことに何故執着し、何を期待していたのだろう?もう少し矛盾する点を整理して引っかかりなくすーと納得できるような展開が欲しい。また、戦時中に陸軍病院で療養中の結核患者が浴衣で散歩…に違和感を感じる。そんな悠長な事が許されたのか?そもそも結核で徴兵検査に合格できるのか?
ロボ手も借りたい!
「家事ロボット」や「美魔女」など現代的なアイテムが入り、ひと味違ったホームドラマになっている。しかも優秀で完璧なロボットがスイッチ一つで豹変するひねりが面白いが、無駄な台詞、台詞の甘さが気になる。最後ももっと無駄なく短かくしめたほうがよい。その分関西弁でスパルタに変わったロボの姿や、その対応に慌てる家族の姿を描いた方がより面白かったのでは。
父からの贈り物
ドラマ性が高い作品。家を出た父親が亡くなり、遺品として10分進んだ時計が残る。それで命が助かるという設定だ。そこがドラマ性を高めているのだが、段取りくさい感じがする。父親が出て行った理由もキチンと書くことも必要。
優しさめぐり
子供がいい。ちょっと生意気だが、いかにもいそうな感じがいい。その子供らが大人の世界に触れつつ成長していく。全体のイメージも、あるファンタジー感が流れている。
以上、10編