第15回南のシナリオ大賞 一次審査通過作品
一次審査員の寸評(応募順)
寂しくなったら、電話して。
冒頭からすぐに胸騒ぎのようなものに心を掴まれる。台詞がイキイキとしている。緊迫感を持って、ラストまでグイグイと引っ張られる、完成度の高い作品。
若葉親子
「良い人」って、周りからみたらソンしている様に見えても、案外本人にとっては、そうでもなかったり。本当の「良い人」って、ソントクは関係ないのでしょうね。稀に、この程度のトクが有ってもいいはず。いい話です。セリフも好きです。「……怖ぁ!」これ、とても好き。
夏のリコメンド
女子高生とユーチューバーの男子中学生のスマホにリコメンドされる長崎観光を織り込みながら、ストーリーをうまくまとめていた。
ジャズとコーヒーのノスタルジーも長崎に似合っている。
流れる炎の約束
登場人物と地域のぬくもりに癒される。
人物の輪郭がたつ台詞がうまい。以上。
玄界灘の三度鳴き
酪農を営む女性と写真家志望の青年、ふたりの人格が父親との関係性からうまく導き出されて秀逸。酪農についての取材も行き届き、ストーリーに上手く馴染んでいる。喜んでるときに3回鳴く牛の声、音で聞いたらラストは涙が出そう。
キモうございません
『大学生の龍田は、ミコと名前をつけた野良猫に餌をやり続けていた。ある日、龍田の傷口の血を舐めたミコが若い人間の女性に変る』
ご主人の龍田を一生懸命、悪い女から守るミコの姿が愛らしい。ご主人へのミコの想いが感じられるタイトルも良い。素敵なファンタジー。
見果無島の果無草(みはてぬじまのはてなしそう)
プロローグ登場人物の台詞が逆のうっかりミスが惜しい。
構想設定主題がミスを上回る魅力。以上。
メロン・チェリー・マンゴー
アイディアがとても面白い。ラジオドラマの特性を良く活かし、読むもの聴くものの創造力を掻き立てるようにドラマが作られている。
ラストは、わかったような、わからないような……?
雨は過去を流さない
ストーリーは何処かで見たようなドラマを継ぎ接ぎした感も否めませんが、2人のやりとりのセリフは人物をしっかり描けていると思います。
女性が二重人格で男性の声を演じるのも演出と役者としてのやり甲斐もありそうです。
世界の終わりと鍛冶マサトの告白
『冴えない大学生の鍛冶マサト。ある晩、マサトの頭の中から声が聞こえてくる。その声の正体はマサトに寄生したコロナウイルス達だった』
コロナウイルス達のお喋りが楽しい。ウイルスを恐いものではなく、ユーモラスに描いているところに、このシナリオの良さがある。
人魚の贈り物
とても鮮やかなファンタジー。ラジオドラマならではのシチエ―ションが楽しい。キャラも面白い。人魚というと美しい人魚姫を想像するが、口の悪い中年の方言を喋る人魚という設定が意外性があり良いと思う。
また、ラストのどんでん返しがさらりと描かれ面白い。
EKIDENキッス
主人公直人は、幼なじみの早紀にたのまれ、そのお礼につられ駅伝で走ることになる。お礼は、早紀のファ―ストキッス。約束を果たした直人がわくわくしながら早紀に会いに行くと、早紀のファ―ストキッスは他の男子へ~キスもできず、泣きながら猛スピードで走り出す直人に私は、同情しながらも、なぜかおかしくて笑ってしまった。そして、(がんばれ!人生こんなこともあるさ)と、直人にエールを送りたくなった。
葉桜の頃に
着眼点が今の時代っぽくてリアリティを感じる。
50円ぽっちの罪
上手い。特に凝った捻りも使っていないが、物語に引き込まれていく。短いセリフのやり取りが読んで心地よい。言葉も厳選されている。間の取り方も絶妙。相当な書き手だと思います。
娯楽の殿堂ながさき座
夫の定年後、家族として一番充実して楽しかった長崎で余生を過ごそうと帰省してきた夫婦の物語。実は妻は死んでいるという設定は、ありふれた感じがするが、すでに閉館しているながさき座という映画館を中心に話が進む。大きなドラマチックな展開はないが、夫婦の会話や随所に登場する映画のタイトルや音楽が、懐かしく切ない。
何者の何か
社会問題と感染をモチーフにしたSFタッチの物語が面白かったです。
怪獣モノのムービーを見ているかの様なスケールの大きさと展開。オーデオドラマ化してみたい作品です
あの夏のジンベ―さん
温かい作品。登場人物が皆良い人過ぎる気もするが……。ジンベーのキャラが可愛い。心がささくれ立ったときに、この作品に出会いたいかも。
ただいま足音
日常のふとした会話から重大な家族の秘密が暴露されるのだが、どこまでも日常の延長で進む会話のテンポ感が良い。グローバルな家族観を展開しながら、最後はこの家族の日常に収束させていくところに作者のセンスを感じた。
伝書鳩とマッチメイカー
面白い。15分にうまく詰め込みましたね。終わらせ方もきれいです。
久しぶりにプロレスが、見たくなりました。
彼女の予報ではこのあと雨
なぜだか「タイムマシンもの」に惹かれます。最後はこうなるだろうと思っていても、飽きずに読ませる筆力は十分。この筆者でしたら、長編にも出来そうですね。後で気付きましたが、1ページ目から伏線はってありました。
田村のホームラン
現役最期の打席に立つ田村選手と、別れゆく夫婦の賭けがうまく交差された物語になっています。奇跡を期待する夫。かつて愛し合った夫婦の野球観戦の結果に切なくも晴れやかな味わいがありました。
アキラのわすれもの
作者は、たまたま同じ電車に乗り合わせた乗客の話を、聞いているような・・・・・それが、だんだん事情がわかる面白味を狙ったというが、それは一応成功しているように思う。全編を通して流れる、電車の中の効果音、停車する駅の情景など、読んでいて、正に電車の中の一乗客の気分になった。これをラジオドラマとして聞いてみたいと思う。内容も、最後までアキラ本人を出さないのだが、気にならなかった。巧みな構成だと思った。
天神行路
時代は平安京、怨霊となった菅原道真は、純真な少年との出会いを介して梅の精から叱咤され大宰府へ帰ることを決意する。
奇をてらうことがない真面目なドラマづくりを評価しました。
デバヤシが鳴る!
あの世の話がとてもリアルだった。
会話のテンポがよく、クスリと笑わされた。
大飛行
新しい父親のことをお父さんと呼ぶ気持ちになるまでの里穂の心の動きが、よく書かれていたと思う。バンジージャンプが怖くてなかなかできない父親の背中を、おもいきり押す里穂、というラストシーンに、読者の私は、どきどきしながらエールをおくりたい。
オルガニストを探しに
『虚言癖のある大学の先輩凉子のことが気になる今井。凉子の虚言には悲しい過去が隠されていた』
嘘をつき続ける凉子の切ない過去を、今井が自分の想像力で、どんどん幸せな風景に変えていく。「想像力って素晴らしい!」そう思わせてくれる爽やかで温かな物語。
なつのあと
じいちゃん思いのカケルと、河童の川彦の優しさが、よく書けていると思う。カケルの太ももについた紅葉みたいな河童の足跡が印象的。
ボクは、なくことができない
セミの視点で書くという新しい試みが評価できた。
また、ストーリーもしっかりできていた。
アマビエに祈りて
母親を思う子供の気持ちが、それぞれの立場で丁寧に書かれていた。
鉄橋のその先へ
映画「素晴らしき哉、人生!」風のファンタジー。
高千穂のロケーションで映像化したら素敵なドラマになりそう。
夢を二人で
女の妊娠をきっかけに、夢と家庭の選択に悩むカップル。
甘い人生観ではあるけれどポジティブな結末は好感がもてる。
よんなーよんなーちばりよー
自らの才能に自信をなくした25歳の男と、10歳の子どもとの会話が中心になって展開するドラマ。初めは子どものストレートな言葉や行動に振り回される男だが、タイトルにもなっている沖縄の方言を聞いた時、男の心がほぐれていく。自らを反抗期と言う子どものキャラクター設定がよかった。子どもは、子どもなりに大人を気遣い励まそうとするものだということが伝わってくるラストだった。
ほとんど二人芝居になっているので、途中で父親の声をはさむとよかったのではないか。オーシャンドラムのSEは新鮮だった。
知らんけど
大阪弁の会話がテンポいい。
場面によって「知らんけど」のニュアンスに変化があるところもよい。
うまいもん祭り
2組のカップルの話を回転ずしの職人の活きの良さと合わせ、うまい話に盛り込んでいます。
最後、どんでん返し風のストーリーもなかなかうまい。場面設定は真面目に考えたらナシだけど、うまいものとうまい話がマッチして、祭りというか、あとの祭りとならないように願いたい。
SANZをGO
タイトルをアルファベット表記にしていることで今風の感覚で読めました。いじめ自殺を三途の川の航海中に思い直し、現世に戻っていじめっ子に向かうシーン。主人公の成長が清々しく見られます。
タイトルはSANZでGOが良いかもと思いました。
ある社員の秘密
ストーリーは面白いが、オチに対してキャラの個性が弱い。
あっと思わせる伏線もほしいところ。
NO FRIENDS, NO LIFE
押しつけがましくないメッセージ性が、心地よい読後感。話題の「バンクシー」、「いじめ問題」を扱うなど、社会性もあり、雨の音も効果的に使われている。洗練された作品。
おもらしと徘徊の夜
9歳の男子と75歳の祖父の会話が中心のドラマで設定が面白い。母親と一緒に桜島へ越してきた男子は、噴火音が怖くて夜のトイレに行けずおもらしをしてしまう。あいにく母親は夜勤で不在。祖父は老人ホームにいるガールフレンドの元へ行きたくて仕方がない。互いに秘密を守るという約束を交わし、一緒に家を抜け出す。二人の間に信頼が生まれ、男子は自分が女子の心を持っていることを打ち明ける。性の多様性を受け止めて語る祖父の言葉が感動的だ。
桜島の噴火音がSEとして上手く表現できると効果的だと思う。
返事しろよ
亡くなった人と壊れたオルゴール。AI。うまく使っていると思います。返事してほしいよね。生身の女性との再スタートを思わせるラストも主人公を応援したくなります。
エッセンシャルワーカー ダツエさん
『電子マネーやAIの登場で、地獄の世界でも働き改革が行われた。仕事を失った奪衣婆に閻魔大王が新たな任務を命じる』
発想が面白く、最後まで楽しく読めた作品。人間界で働くダツエさん(奪衣婆)に親しみが湧き応援したくなる。これは映像ドラマでもイケると思う。
つげ櫛物語
淀みない話のながれと巧みな会話が、時空を包むやさしさと主題を、ひきたてている。以上。
桜島上空の風向き
同級生に、ラブレターに、先生に、降灰にみる、青春にゆるされた感覚がまぶしい。以上。
おいしいヘタクソ事件
テンポがいいです! オーディオドラマにすると面白そうなシナリオです! 夫婦のクスッと笑えるコミカルな会話と、旦那のヘタクソ具合が面白い。相手に感謝する気持ちを伝える大切さを、ユーモラスに描いた作品でした。
願いを込めたオルゴール
登場人物のキャラクターが分かりやすくしっかり設定されているので、ドラマ全体が最後までブレずに進んでいる。中学の同窓会で再会した35歳の男女。学生時代から強気で早口でハッキリしている女と、気弱で人前に出るのが苦手な男。二人の間には、小さなオルゴールの思い出があった。SEで使われている「赤い鳥小鳥」のオルゴールが重要な意味をもってドラマのエッセンスになっている。場面設定も情景が浮かぶように構成されていて、二人の心の動きも自然体だと思う。
タイトルに、もうひと工夫欲しいところである。
飛べない鳥
走り幅跳びにかける女子高生たちの青春を爽やかに描いた作品。
飛べない鳥ヤンバルクイナも魅力的だった。
蕎麦屋のうどん
定番の人情噺だけど展開にちょいとヒネリがある。セリフのテンポは良いしクスッと笑えるところも。ご都合主義なストーリーもほのぼのしてて嫌味がない。
魚拓の夢
クレー射撃選手の夢を諦めて実家へ帰り、父の仕事である猪撃ちを手伝う45歳女性のドラマ。脇をかためるキャラクターたちが個性的で面白い。口が悪くて詮索好きなオバのセリフが上手く家庭環境を説明し、優しいオジが主人公の目を覚まさせるきっかけを作っている。自分中心の考えから、父親の歩んできた道や苦労に想いをはせていく主人公の心の成長がよく描けている。それがあるからこそラストの父親のセリフも効いている。ただ、タイトルと内容が合っていないのが気になる。
わりきれない親子
ショートストーリーの中に、ドラマティックな展開があり、楽しく拝読できました。登場人物のキャラクター設定もしっかりとなされています。エンターテイメント性のある作品です。
めんどくさい二人と花の香り
空気清浄機の使い方が効果的であった。読みやすく、登場人物の心情が伝わってきた。
しゃもじ
発想が面白い。同棲中の男女の話で、営業の仕事で日々疲れているのに、帰宅して家事全般をする男。しかし、女に惚れているがため、つい笑顔で応えてしまう。料理もすべて行う。女性は天真爛漫でずけずけと思うことをしゃべる。しゃもじというタイトルは、〇×方式の×を意味する時に使おうとする小道具。結婚するか、あるいは無理なのか、同棲生活の揺れる男女の心境が描かれ、その爆発する切っ掛けの小道具としてのしゃもじが面白い。だが、舞台が沖縄でなくてもどこでも成り立つのは、惜しい気がした。
スタートライン
スランプに陥っていた陸上選手のひよりは、インターハイ前に足を骨折し、走れなくなる。幼なじみで科学バカの倫太郎が自分の作ったマシンで、ひよりの足を治す飲み薬を未来から探してくるという。もう二度と走りたくないひよりだったが、自分の本当に好きなことに気づく。
「好きなものに向き合うと苦しい」という倫太郎の言葉が光っている。ひよりの苦しさが、もう少し表現できたらもっといいと思う。
不運な刑事
アクション要素もある刑事ドラマ作品。
動きが大きい分、ラジオドラマとしては分かりづらい部分も多い。
以上、52編