第15回 南のシナリオ大賞 二次審査通過作品

日本放送作家協会 九州支部

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第17回南のシナリオ大賞「Perfect Worldへようこそ」MP3オーディオドラマ配信中

第15回南のシナリオ大賞 二次審査通過作品

二次審査員の寸評(応募順)

玄界灘の三度鳴き
人と牛との悲しい絆の物語。場面々での描き方の丁寧さがラストへと繋がっていく。感動的だが、ちょっとベタかも?

ただいま足音
世間的に重くとらえられがちな家族のテーマを含みながらも、軽やかな語り口が楽しい。沖縄の話題も興味を引かれた。作中で「何が」流行ったのか、作者はあえて言葉を伏せたと思うが、ドラマとして成立するだろうか。新型の病気が流行し、不自由な生活を余儀なくされたが、今は平穏を取り戻している(という設定の物語である)ことが台詞で表現されれば、より普遍的なドラマになると思う。

田村のホームラン
ラストまでホームランを期待させながら物語は進んでいく。ミスリードさせながらリアルで終る。ベタじゃない終わり方に好感が持てる。

大飛行
ストーリーの運び、人物の設定、無駄のない台詞……どれも書き慣れた感じで、「上手いなぁ」と思わせる作品です。ただ、逆に、うまくまとまりすぎて、面白みやインパクトに欠けるように感じます。
お父さんが42歳。ちょっと言葉遣いが若すぎるかな…とも思いつつ。中2の女の子と一緒だったら、それくらいカッコつけるかも…と少し納得。テンポも良くて、でも会話劇の中に、ちゃんとドラマがあって。ちょっとグッときた感。シンプルながらよくまとまっています。

オルガニストを探しに
チャラいサークルのホラ吹き女子大生から、内側の悲しみが垣間見られる心の揺れ動き。そして東北の海から西の海までどんどん移動していくドラマのイメージが面白い。妄想の中の父親は現在にいるのか、過去に行っているのかわかりにくかった。ラストも力が抜けてしまった。

ボクは、なくことができない
珍しいセミ目線のシナリオ。セミの気持ちになって読むと結構面白い…けど、オチが「100日後に死ぬワニ」でちょっと尻すぼみ。途中のドンデンを期待した僕が悪かったのか……でも、オチまでは楽しく読ませてもらいました(^^)

おもらしと徘徊の夜
おじいさんは徘徊を心配されるほど認知が進んでいるにしては、理路整然と考えを述べる。この辺りに違和感を感じるが、とても面白いキャラになっていると思う。一点。ジェンダーの問題について、その描写や「共生」という言葉など、一般に情報として流れていることに留まっていて、作者自身の言葉や考えが使われていないのが残念。

返事しろよ
奥さんを事故で亡くし、その絆を繋ぐのがオルゴール。よくあるラブストーリーの終わりになるなかなと思っていたが、微妙に納得のいく終わり方に救われた。
冒頭の妻との会話(のように聞こえるもの)の仕掛けが成立するか? という最大級の不安はあるが、台詞と音でドラマが自然に展開していく良さもあった。「返事しろよ」の意味が変化していくのが味噌。しかし、命令口調のタイトルが、ドラマの優しさに反しているような印象を受けた。

エッセンシャルワーカー ダツエさん
「地獄」や「三途の川」を題材にした作品はよく見かけるが、この作品は構成がしっかりしていて、スピード感とオチがあり、読後感がよかった。オーディオドラマで、ダツエさんの(鬼バージョンと人間バージョンの)声の使い分けをぜひ聞いてみたい。コロナ禍の中、今を大切に生きようと思えた作品。
「地獄のデジタル化を進める」という、現代の課題を地獄に持っていった設定が秀逸で、それを軽快な台詞のやりとりで描いていて、とても面白かった。奪衣婆やえんま祭りなどの博多の故事も、説明的にならず、うまくストーリーに織り込み、巧みだったと思う。ただ、最後の真美の台詞は蛇足か?「こんにゃく」の話で終わった方が面白かったと思うのだが。

おいしいヘタクソ事件
秀逸でわかりやすいストーリー。冒頭のきっかけ作りも興味が湧く。とってもいい入り方。読み終わると笑顔になる。テンポもいい、ラーメン屋のくだりもなかなか良いぞ!

飛べない鳥
高校2年生の新垣さえは、走り幅跳びの有力選手。何気ない一言に傷つき、何気なく放つ言葉で相手を傷つけてしまう未熟さが切ない。また十代ならではの不安や葛藤、そして成長していく姿が、セリフや会話を通して伝わってくる。ラストでさえが風に乗って飛ぶ姿は、明るい未来を想像させてくれた。飛べない鳥は絶滅するのではなくて、またいつか飛び立つのかもしれない。

しゃもじ
本音が言えない優しい彼と天真爛漫の彼女。二人の会話は夏野菜のように色鮮やかでみずみずしい。主人公の彼はジェンダーレスなキャラクターで、仕事も家事も出来るバランス感覚に優れた人だが、相手にとって都合のよい存在になっている。そんな自分と彼女との関係を変えようと「しゃもじ」(文字詞?)を会話に取り入れて四苦八苦するところも面白い。本当に大切な相手とどう向き合うのかを考えさせられるドラマ。

以上、12編

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