日本放送作家協会 九州支部
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日本放送作家協会は、放送メディア文化の普及発展と国際的交流をはかり、我が国の文化向上に寄与することを目的とした一般社団法人です。九州支部には九州・沖縄で活躍している脚本家・構成作家40名の会員が在籍しています。
リレーエッセイ、一番手です!
「あんた、そんな色の服ばっかり着ていたら、幸せになんかなれへんで!」
「えっ! じゃあ、あたし、何色着たらいいんですか?」
「そうやねぇ〜……ベージュとか、茶色とか……とにかく目立たん色や」
「へぇ……つまんない色ですね」
「そういう色が一番落ち着くんやで」
これは数日前、私が街で占ってもらった時の占い師との会話だ。
多少記憶があやしいが、確かこんな感じのセリフの応酬だった。
『手相見なんだから、私の服の色なんて関係ないんじゃ』と心の中でつぶやきながらも、私は彼女の次の言葉に期待する。
私よりもさらに派手な衣装に身を包んだ魔女に、信頼なんかこれっぽっちもないというのに、『あたしゃ、何でもお見通しさ』と言わんばかりの彼女の瞳に圧倒されて、彼女の言葉に真剣に耳を傾けてしまうのだ。
そしてそれ以来、私は蛍光色の上着を着ていない。
私はあの時、見知らぬ関西弁の魔女からどんな言葉が欲しかったのだろうか?
落ち込んだ時、泣きたい時、誰かからかけてほしい言葉がある。
ただ、たった一言が欲しい。
その言葉が聞きたくて、言ってくれない人のところにまで駆けこんでしまう時がある。
そういう時の自分は、ちょっぴり寂しい。
さて、今月突然、HPでのリレーエッセイ一番手の指名を受けた。
小心者なので、内心、『ひええっ!』と驚愕したが、今年の私は『とにかくひるまず、書くことの依頼は受ける』と決めているので、ずうずうしくも即決で引き受けた。(今、その時の安易な決断にほとほと後悔しているが)
そんなこんなのリレーエッセイの一番手で、突拍子もなく占いの話から始めてしまったが、私は放送シナリオ作家養成講座に通う、作家志望の三年生である。
早いもので、私がこの講座に通い出して、いつのまにか二年と半年がたつ。
初級講座を半年受講して、それから上級講座に進むのだが、上級講座に移ってからが長い……。
初級も上級も講座自体は半年で修了なので、受講生は随時入れ替わっていくのだが、私はひたすら留年を続けているから長くて当然か……。
講座には、同じように作家を目指す人たちが集まり、毎回いろんな刺激を受けたり、先生からの課題に苦しんだり、さらには手厳しい講評を受けて落ち込んだり……。
結構軽い気持ちで入校したはずなのに、いつのまにか『とにかく自分の満足のいく作品が書けるまで!』と長期間居座る覚悟を決めてしまった自分がいる。
おかげで半年ごとに受け取る修了証書がどんどんたまっていく始末だ。
そんな私がドラマを書こうと思ったきっかけは、本当に突然、街占に立ち寄った時のような小さな好奇心からだった。
その小話をしたいので、少しだけ、年月をさかのぼる。
三年前の肌寒い日。
私は一人で博多のキャナルシティへ向かっていた。
地下鉄の中州川端駅を降りて、昔ながらの商店街を通り抜け、専用のアーケード付きの歩道橋を渡る。通いなれたキャナルシティへの行き道。
歩道橋を渡り、キャナルシティまであと数秒というところで、壁に貼られた一枚のチラシが目についた。
「第3回南のシナリオ大賞・朗読劇」
キャナルシティに隣接する、地元の小さなホール。チラシによると、そこでラジオドラマのシナリオ(複数の受賞作品)を朗読劇として上演するらしい。
「シナリオ大賞……聞いたことないな。でも何となく面白そう」
そんな軽いノリで観劇し、私はある作品の心に響くセリフを聞くことになる。
大賞受賞作品「ぼくはマジメに生きている」
落ち込んでしまった主人公の男性に、男性の友人がかけた言葉。
一人でもがいて浮上できなくて、もうどうしようもない時、身近な人から何気にかけられた一言。その一言でスッと気持ちが落ち着く。
言葉の力ってこういうところにあるのだと思えた。
「私も書いてみようかな?」
その後の私の行動は、本当に早い。HPでシナリオ講座のことを調べて、早速受講申し込みをしていたのだから。
そして今、リレーエッセイの一番手を引き受けて、「書けないよ〜、好き勝手でいいのに緊張するよ〜、日本語うまく使えないよ〜」と半泣きになって書いている。
さらにこのエッセイを書き終えたら、一月の応募に向けてラストスパート!
偶然のシナリオとの出会いから三年。
書くことは辛いけれど、何よりも楽しい。
登場人物が個性を持って動き出し、時には自分が探していた言葉を言ってくれる。
人と人との間に生まれるドラマを書きながら、言葉の魔力についていつも不思議に思う。
今度自分が書く作品で、私はまたどんな出会いがあるのだろう?
自分で書いた作品の出来にまたへこんで、今度は全然別の街占に飛び込んでしまうかもしれない。
その時は、もっと面白いこと言われるとよいな。
余談だが、先日の手相見では、私には『モテ線』がたくさんあると言われた。
……手相はやっぱり信じられないと思う。
それでは、つたない私の回はこの辺で。
次は、講座の大先輩、森下さんにこのバトンをつなぎます。
よろしくお願いします。
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