長谷部 楓|映画館『リベルテ』

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映画館『リベルテ』

長谷部 楓
2014年08月14日

私の住む大分県日田市には一館だけ映画館がある。
リベルテという名前のその映画館は、ボウリング場の2階にある63席しかない小さな映画館だ。

映画館自体が出来たのは20年以上前のことだと思う。
そして、私の記憶では2度閉館している。
そのたびに新しい館長さんが前とは違うスタイルでオープンしている。

今のリベルテはオープンして6年目になるらしい。
文字通りのミニシアターで、上映する映画もハリウッド超大作などではなくいわゆる単館系と言われる作品だ。

おしゃれ

この映画館のセレクトを見るたび、いつも思う。
例えば、先月からジャック・タチ映画祭が行われていて、このイベントのおかげで初めてジャック・タチの存在を知った。
最近では絶対に見たいと思っていた『アクト オブ キリング』も『シンプル・シモン』もここで見ることができた。
単館系の映画を映画館で、しかも自宅から車で10分以内の場所で見ることができるなんて!
ちょっと手を合わせて拝みたくなるくらいありがたい。

この映画館おしゃれなところは上映される映画だけではない。

カフェスペースがあり、雑貨の販売もしているので、コーヒーだけ飲みに来る人や雑貨だけ買いに来る人もいる。
『つくし文具』の文房具、『にじゆら』の手ぬぐい、絵本作家・谷口智則さんの絵本やグッズ、MIKE MILLSのポスター、そして鈴木稔さん・水垣千悦さん・三苫修さんらの陶器などなど。
その時々でおいてあるものは変わるのだが、ここに置いてあるものが好きで雑貨を見るためだけにおじゃますることもある。
雑誌『暮らしの手帖』や『nid』で取り上げられたこともあり、雑誌を見て県外から陶器を見に来る人もいる。

それから、コーヒー教室や絵本作りのワークショップ、原画展や写真展、そしてライブなどのイベントも行われている。
カフェスペースでのコーヒー教室やワークショップまではなんとなく想像ができると思うが、映画館でライブ!?
初めてイベント情報を見たときには驚いた。
私は出無精で、あまりよその映画館事情に詳しくないのだが、今の映画館はライブもやっているのだろうか。

しかも今までライブをしたアーティストは、浜崎貴司さん(元FLYING KIDS)・高野寛さん・おおはた雄一さんなどなど。
ちゃんとした(というのは失礼だが)全国区のメジャーなミュージシャン。
日田でライブをするいうだけでも驚きなのに、しかも映画館。

今まで何も無いと自虐的に言っていた地元でこんな映画館ができるなんて!

『楽しいこともカッコいいこともここにはない』と、私が漫然と過ごしている間にこんな空間を作ったこの映画館に携わる人たちを本当に尊敬する。
そしてこの映画館に、今度はずっとあり続けてもらいたい!

が、やはりここは紛れもない田舎町。
映画を見に来る人の数は正直少ない。

でも少ないからこそ良いところがたくさんある。

見に来ている人も常連化しているためだと思うが、座席にずいぶん余裕があっても前列に座る人は端の方に座るという、後列の人への無言の気遣いが観客のなかにある。
お互い、顔見知りというわけでもないのに、毎回違うメンバーで繰り広げられる連携プレー。
そのことに初めて気づいた時、何も考えず真ん中に座っていた自分がちょっと恥ずかしく思えた。
そして田舎ならではの心遣いだよなと少し嬉しくなった。

先日は、東京の友人が「もう立ち見が出てる。もっと大きな劇場でやってよ」とツイートしていた『アクト オブ キリング』も、両サイドの椅子を使い、小鹿田焼きのカップに入ったコーヒーを飲みながらながら悠々と見ることができた。
そして見終わった後には、一緒に居合わせた見ず知らずの観客と立ち話で感想のやりとり。
こんなことはほかの映画館ではしたことがない。

映画館存続のためにはたくさんの観客に来てほしいが、この空気感を損なわないためにあまりたくさん来てほしくないというのも正直なところ。
でも間違いなく一番おすすめしたいところです。

もし、日田に来ることがあって、映画が一本見れる余裕があったら一度立ち寄ってみてください。
そして、ステキな映画館と観客の無言の気遣い座席を体感してみてください。

映画館が当たり前に身近にある方にこそ、一度味わってみてもらいたい映画館です。

長谷部 楓 プロフィール

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