ラジオドラマ脚本の書き方

日本放送作家協会 九州支部

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第15回南のシナリオ大賞

ラジオドラマ脚本の書き方

日本放送作家協会九州支部: 副島 直

第2回から南のシナリオ大賞の審査員を務めさせていただいていますが……
応募作品のなかには、着想・アイディアは面白いのだけど小説として書かれている原稿、芝居の組み立てやセリフは巧いのだけどテレビドラマ形式で書かれている原稿など……ラジオドラマ形式以外の原稿が少なからず寄せられています。

これは本当にもったいないことです。

ラジオドラマの脚本として書かれていたなら、最終選考に残っていたかも知れないのに。

そこで……
初歩的な「ラジオドラマ脚本の書き方」を説明させていただきます。

シナリオとは?

シナリオの語源は英語のシーン(場面)を意味するイタリア語のシエナ(Scena)で、ルネサンス時代に即興喜劇の役者が、芝居の構成やストーリー、登場人物の人間関係などについてのメモ書きを「シナリオ」と呼んでいたのが起源だといわれています。

日本では「脚本」または「台本」とも訳され、映画・テレビドラマ・ラジオドラマ・アニメなどを制作する際の設計図として位置づけられています。

脚本は、ドラマ制作において文字どおり「脚」であります。
ドラマは脚が向いている方角に向かって、ファーストシーンからラストシーンまで、時間軸の上を一直線に走っていきます。
どんなにルックスがよくても(人気俳優が演じても)、どんなに身体が頑丈でも(優秀なスタッフが制作しても)、ドラマは脚の向いているほうにしか進んでいきません。

台本は、ドラマ制作において文字どおり「土台」であります。
どんなに優れた建材(役者)を使っていようと、どんなに器用な大工さん(演出・監督)が腕をふるおうと、基礎となる土台がしっかりしていないと立派な家は建ちません。

シナリオと小説の違い

小説は単独でひとつの作品として成立していますが、シナリオが作品として単独で発表されることは(特殊な例を除いて)ありません。

新聞社などのマスコミ関連団体、あるいは文部科学省などの行政団体が、優秀な映画やドラマに賞を授与しています。そのなかには「脚本賞」もありますが、あれは完成した作品を対象にしているのであって、完成前に書かれたシナリオそのものに与えている賞ではありません。審査員がシナリオを取り寄せて、実際に読んで評価しているわけではないのです。

シナリオは、演出(監督)やスタッフ、出演者などとの共同作業によって完成する作品の構成部分であり、企画から公開までの(たいへん重要な)ひとつの工程でしかありません。

シナリオは作品の設計図であり、制作スタッフや出演者への作業指示書です。
したがってシナリオには、現場でスタッフや出演者がサッと読んですぐに内容を把握できるよう、簡潔で具体的な記述が要求されます。
読者のイマジネーションにゆだねる抽象的で曖昧な文章表現や、何度も読み返さないと理解できないような複雑な説明は、シナリオでは許されません。

これからシナリオを書こうとされている方のなかには、シナリオは心理描写・情景描写などに長い文章を書かなくてよいので、小説よりもラクに書けそうだと思っている人もいらっしゃるかも知れません。

しかし、それは誤解です。

小説は始まりから終わりまでの時間が読者の生理(ペース)に委ねられているのに対し、ドラマの視聴者は、作品の放送時間によって縛られています。
この違いは、シナリオの構成(ファーストシーンからラストシーンまでの大まかな流れ)を考えるとき、たいへん重要なものとなります。

これは概算的な数字ですが、ドラマ作品の1分間は 400字詰め原稿用紙で1枚です。
その限られた原稿枚数のなかで過不足なく状況を説明し、破綻することなくストーリーを進めていくための工夫が、シナリオでは必要となります。

例えば、ある人物が登場したとき、小説ならばその人物の容貌や性格、プロフィール、他の登場人物たちのとの人間関係、なぜここにやってきたのか、これからなにをしようと考えているのか、詳細な説明を長々と書き連ねることも出来ますが、シナリオではそれらの情報を、セリフや現在進行形の芝居のなかで伝えなければなりません。

シナリオのト書きが簡素なのは、手抜きではありません。
必要な事柄だけを、ぎりぎりまで絞り込んだ結果なのです。

またドラマでは、小説のように言葉の意味を漢字で伝えることができません。
小説は文字情報、ドラマのセリフは音声情報です。
一般の人に馴染みのない専門用語や同音異義語の扱いなどに注意が必要です。

シナリオの書き方

本来、シナリオには決まった書式というものはありません。
演劇から映画へ、そしてラジオからテレビへと、新しい表現方法が開発されていくなかで、それぞれの作者がそれぞれの書法で、それぞれのメディアに適したシナリオを書いてきました。
テクノロジーの進歩とともに新しいメディアが誕生すれば、それらに適応した新しい書法がこれからも試みられるでしょう。
実際、アニメやゲーム制作では、従来の書式とは異なるシナリオを用いている現場も多くあります。

とは言え、シナリオは作品の設計図であり、制作スタッフや出演者への作業指示書です。慣例となっている書法があるのなら、それに倣って書いたほうが読む人に負担をかけずにすみます。

ここではラジオドラマ脚本との違いを分かりやすくするために、まずテレビ・映画などの映像作品のシナリオについて、先に書いておきます。

シナリオは、「柱」「ト書き」「セリフ」の三つから成っています。

シナリオの書き方


行の先頭にシーン番号を書き、場所と時間を指定します。
柱から次の柱までがワンシーンとなります。
シーンとシーンのあいだは1行空けます。

シーン番号は制作時には不可欠ですが、それまではシーンを削ったり付け足したり何度も改稿作業(書き直し)がありますので、執筆の際には○などの印で代用している人が多いです。

ト書き
行頭から2マス空けて(3マス空ける人もいる。そのほうが読みやすい)、次の行に跨るときはそれも2マス(または3マス)空けて続けます。

セリフ
行の先頭に役名を書き、続けてセリフを「」でくくったなかに書きます。
次の行に跨るときは、行頭を1マス空けて続けます。
セリフの終わりの句点は不要。行の先頭に」(閉じカッコ)がくるときは、改行しないで前の行の行末に収めてください。

カッコト書きといって、「」でくくったセリフのなかに、()でくくったト書きを書く場合もあります。

先述しましたように、これらの規則は絶対のものではありません。
しかし従来の経験から慣例となっているのが現状です。
この書式が定着してしまった理由はひとつ、読みやすいからです。
過去において様々な書式が試みられてきた結果であります。

字下げをわかりやすく知っていただくために、原稿用紙の画像を使っていますが、ワープロ原稿を印刷される場合は、市販のコピー用紙などの白紙に印刷してください。
原稿用紙のマス目の中にチマチマと印刷されたワープロの文字は、(フォントや文字サイズにもよりますが)とても読みづらいです。

ラジオドラマ脚本の書き方

改行および字下げのルールは、テレビドラマの場合と同じでけっこうです。
「ト書き」と「セリフ」の間を1行空けて書く人もいます。
場面(シーン)の最初に書く「柱」は、ロケ地やスタジオの手配をしたり、撮影や照明係の段取りのためのものなので、ラジオドラマでは書きません。
シーンの場所や状況、人物の動きなどは、すべて「ト書き」と「セリフ」で説明します。

ラジオドラマ脚本の書き方

映像のドラマに慣れてしまっている人は、場面の情景や人物の動きを、音だけで表現する方法に悩まれるかも知れません。

発想を切り換えてください。

ラジオドラマは、映像を音に置き換えて表現するドラマではありません。
聞き手に、音で場面をイメージさせる、
聞き手に、音で状況を想像させる。
聞き手のイマジネーションを刺激して、それぞれのアタマの中に独自のドラマ世界を築くのがラジオドラマです。

ナレーションとモノローグ

映像情報がないラジオドラマでは、ナレーションやモノローグによって、場面や状況を説明することが多いです。
ナレーションとモノローグの違いは、ナレーションは「場面や状況の説明または解説」、モノローグは「登場人物の声に出せないつぶやき」と考えてもらってけっこうです。

ナレーションとモノローグ

ナレーションは「N」、モノローグは役名に「M」の略号を付けます。
上の例ですと「誠人のM」と書いてもよいでしょう。
ナレーションやモノローグは、状況や心情をそのままズバリ言葉で表現できるので便利ですが、多用すると説明的になりドラマの面白味が薄くなってしまいます。

終わりまで書き上げたあとで、そのナレーションやモノローグが本当に必要不可欠なものか、他の方法で表現できないか、再考してみてはいかがでしょうか。
経験から……カットするかしないか迷ったときは、思い切ってカットしたほうがうまくいく場合が多いです。

ラジオドラマ・シナリオの記号

ラジオドラマのシナリオでは、通常以下の記号が用いられています。

SE …… 効果音
M …… 音楽
FI …… フェードイン(音量がだんだん大きくなって入る)
FO …… フェードアウト(音量がだんだん小さくなって消える)
CF …… クロスフェード(前の音が小さくなるのにカブッてあとの音が大きくなる)
CI …… カットイン(唐突に音が入る)
CO …… カットアウト(唐突に音が消える)
on …… オンマイク(マイクに近い位置で録音されるセリフや効果音)
off …… オフマイク(マイクから離れた位置で録音されるセリフや効果音)

知っておいて損はないですが、これらの記号は必ず用いらなければならない、というものでもありません。
先述しましたように、ラジオドラマ脚本のト書きは、すべて音で表現される記述です。特に「SE」と付けなくても、効果音であることは分かります。
フェードイン、フェードアウトも、芝居の流れや場面転換がきちんとシナリオに書かれていれば、どのように音を処理するべきか、演出や音響担当スタッフにはちゃんと伝わります。
コンクールの審査でも、シナリオに記号が付けられているから高評価、付けられていないから低評価、ということはありません。

重要なのは、ラジオドラマのト書きには「音で表現できる事象しか書いてはいけない」ということです。

以上、簡単ですがラジオドラマ脚本の書き方について説明させていただきました。コンクール応募の参考としていただければ幸いです。

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