第6回 南のシナリオ大賞 選考会レポート

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第6回南のシナリオ大賞 一次審査通過作品

作品内容および一次審査員の寸評(応募順)

「野焼きガールズ」
口の悪い全盲の女性にヘルパーに入った主人公は、誘われて阿蘇の野焼きに行った。幻想的な野焼きの火を見ながらヘルパーは全盲の女性に心を寄せていく。
着想は面白い。だがセリフに情感が出ていない。ドラマのリアリズムがいまいち不足。

「茂のねこ」
いなくなった飼い猫を探しに阿蘇へ入ったら、猫屋敷に誘われた。そこであやうく猫にされるところを逃げ帰って、猫屋敷の毛はえ薬を村のものに配って喜ばれるという話。
民話っぽい話で楽しいがもう少し人間描写ができていれば……

「Sweet Message −あなたからの優しい便り−」
ストレスに悩む看護師が海で拾った瓶詰めお便りを持って沖縄へ旅をする。最後に、父の優しい便りを本のなかから発見する。
結構、読ませるシナリオだが筆力があえばもう少し良い作品になっただろう。

「南十字星とヤドカリ」
波照間で死のうとした若いカップルはマリッジリングを海に放った。そのリングをヤドカリが鋏にはさんで海から持って来る。
面白い設定だがもう少し工夫してドラマチックに盛り上げて欲しかった。

「母の弁当」
お母さんの弁当はダサイといわれた母親が、昔、自分も同じようなことを母に言ったことを思い出す。
ドラマの入りが定番だが後半からいいセリフに変わっていく。しみじみしたリアリズム。平凡な秀作。

「トミオとユリエ」
樹海のなかで心中しようとした二人が生きかえってしまう。二人はお互いの幻影を見て再び相手を殺そうとする……。
設定は面白いがわかりにくい。セリフが稚拙。妙に考えさせる作品。

「1リットルのサーター」
下積みの役者を10年続けた直樹は親友の訃報を受け沖縄に帰り、一旦は農園を継ぐ決心をするが、受け取った親友からのプレゼントと手紙で役者を続けることを決める。
台詞や設定は巧く、ストートーもうまく流れているが、タイトルを活かすためかサーター(砂糖)を100ccと数えたり(誕生日に100gずつ送るのも不自然だが)、死んだ親友の奥さんに葬儀の日求婚するなど、細かい点で疑問が残る。

「母の恋心」
母の秘めた恋を想わせる葉書がタイムカプセルから出され娘の許に届く。夫の浮気を疑っている彼女は母と夫の姿を重ねて反発する。
短編小説のような作品だが、葉書で恋心を送る? 30代か40代でタイムカプセル? 而もそれに意味ありげな葉書を入れる? 一転して最期、母の恋心を許すのは何故? と多々疑問が残る作品。

「朝焼けの泪」
終戦直前の特攻基地。整備不良で飛び立てなかった主人公は、夜中に一人飛び立とうと画策するが、年配の整備生が体を張って留める。
骨太な特攻の話しだが、どこかで読んだり、観たことがあると思わせる作品。強烈なオリジナリティーが感じられない。

「指ならし」
三人の子育て中の主人公は、プチ家出をして自分がいない将来の我が家の夢をみる。
言葉がよく選ばれた会話で、設定や話の進め方も巧いが、テーマの新鮮さや意外性がない。*九州の地名がはいっていない。

「遠い笛遠い波」
理恵は、認知症の入った母を連れて博多にやってくる。終戦直後、幼くして死んだ姉の墓を探すためであるが、母にはなにか特別な思いがあるらしい。
会話や人物設定に無駄がなく巧い。オーディオドラマにふさわしい作品。もう少し盛り上がる箇所があればもっといいと思う。ただし、最期の種明かしが必要か否か? また戦後すぐの街中でフルートが吹かれていたというエピソードに若干の違和感あり。*書式を正確に直すと、枚数オーバーの可能性あり。

「蓮池前のバス停にて」
熱中症で倒れ生死の境をさまよっていたとき、先に死んだ夫がまだ天国にこないように計らってくれて、死なずにすんだ。
話がうまくまとまっている。先に死んだら迎えに行くという約束を逆手にとって、妻の生き生きした余生を願い、現世へ戻すよう仕向ける夫の思いやりが温くて爽やか。

「行方知れずの小鳥たち」
屋上から飛び降りた少女と取り残された少年の心象風景。
詩劇。うまいが、感傷的すぎる。他作品と作風が大きく違い評価が難しい。

「最後の一歩」
就職活動に失敗し続ける大学生が、柿農家の父が倒れたことを口実に就活から逃げる。しかし病み上がりの父が諦めずに黙々と働く姿に教えられ、就職活動を再開する。
うまく書けているが、ありきたり。印象が薄い。

「近くて、遠い」
離婚後、妻に引き取られた娘が自分が船長を務める船で結婚式を行う。娘への引け目から父親だと名乗れなかったが、同僚に後押しされ会場へ行くと自分以外の全員が自分が父親だと知っていて祝ってくれる。
もう少し主人公の葛藤に枚数を割いて良かったのでは。変わることが悪いことではないのエピソードがふさわしくない。

「静バァの渡った海」
バイク事故で入院する家出少女が入院患者の静バァと仲良くなるが亡くなる。退院することになり、静バァが走って逃げた関門海峡を歩いて渡ることに挑戦する。
静バァのエピソードなどストーリーは面白いと思うのだが、人物のキャラが古い。

「きらら」
合唱コンクールを控えたクラスがまとまらないのは誰のせいか。不満をうまく言葉にできずぶつかり合いながら答えをさがす。
思いも言葉も中学生らしくリアリティがあるが、主人公のキャラが弱い。

「ゆらめく記憶」
紗英は認知性の祖母に記憶が戻ればと思い出の浴衣を着せる。一瞬、紗英の名を呼ぶ祖母。祖母の記憶が消えていないことを確信した紗英は、家族のつながりの強さを痛感する。
セリフも構成も読みやすい。が、恋人の葛藤のなさが物足りない。最後のモノローグの意味がわからない。

「南風便り」
仕事人間の夏輝は心の余裕を失いがち。ある日沖縄を訪れていた恋人からメールが届く。その呑気な内容と恋人のはからいに癒される。
盛り上がりはないが読ませる作品。メールのやりとりをラジオで表現することは可能か?

「あなたの好きなもの」
父と不仲だった男は、父の棺桶に何を添えるべきか分からず落胆。だが火葬場を出たとき桜島が好きだったことを思い出す。男は骨壺を空にかかげ舞い落ちる桜島の灰を父に捧げる。
着眼点が面白い。父の息子に対する想いも知りたいところ。

「カレイなる一族」
別府湾の高級魚・城下カレイになる自信のなさから回遊魚になろうと大海に逃げた子ガレイが、運命と向き合い地域貢献することに誇りを見いだし立派な煮魚になるまでの話。
オリジナリティがあるし、面白く、深い。タイトルは大丈夫か?

「神様の帰郷」
旧家の土蔵が区画整理の対象に。それを機に、許嫁を奪った弟に家督を譲った老人が62年ぶりに帰郷。老人は元許嫁で当主・フミへの恋心を打ちあけた翌日、息をひきとる。
面白いが、老人の人生描写が物足りない感じ。主人公らしき女性がナレーション役になっているのが惜しい。

「失くした指輪物語」
兄の死後、家業を継ぐ重圧を感じる少女は兄を許せない。ある日指輪をなくした思い出にとらわれる老人が現れる。少女は兄の幻と協力し老人を救い、兄とのわだかまりも解消する。
明るい雰囲気が魅力的だが、心理描写にリアリティがない。

「天の川を見下ろしながら」
母の苦労を見て育った達也は恋人との結婚にふみきれない。だが地元の七夕祭りの懐かしい光景が、ただずっと一緒にいたいから父と結婚したと語った母を思い出させ、結婚を決意。
人物の心がよく描けている。ただ主人公が恋人を必要不可欠に想う描写がないため、プロポーズへの流れが少し不自然。

「羽毛布団を売る男」
悪徳商法の詐欺師が、以前カモにしたことのある癌患者と再会し、なぜか感謝されて……。
探していた男の顔を見てわからないはずはない。展開がやや乱暴。

「カメ子の旅」
長年営んだパン屋を立ち退きで失うことになった老婦人が、疎開先に残してきたカメを探しに大分へと旅に出て……。
老婦人の過去の想い出をたどる旅が未来につながるのはいいドラマ。やや定番。

「月に泣くふたり」
結婚して5年、夫は強引に妻を連れ、妻の実家へ。途中、関門トンネルを歩きながら、夫はある決意を妻に伝える。
トンネルを産道に見立てて描く世界観がいい。

「娘とスマホとオレンジジュース」
駅で妻の帰りを待つ主人公とその娘。主人公は、過去に待ち続けたある人物を思い出す……。
奥行きのある展開。過去と現在の対比がいい。

「私のしぼう動機」
就活がうまくいかない男が、自棄になり向かった九州で、死神だという居酒屋の大将と出会い……。
「志望動機」と「死亡動機」を空目するという発想が面白い。主人公が「死ぬ理由」を書けない葛藤がもう少しほしい。

「晴れ舞台」
夢を抱いて音楽教育に携わるのが京香の夢。しかし内示された赴任先は特別支援学校だった。教育演習でその学校に行った京香が受けた衝撃と教訓。
読ませる力はある。書式も完全。しかし内容が少々道徳教育のような。作者のメッセージが教科書みたい。

二次審査通過作品

(4)「月に泣くふたり」
(3)「娘とスマホとオレンジジュース」
(2)「母の弁当」
(1)「私のしぼう動機」
(1)「蓮池前のバス停にて」
(1)「最後の一歩」
(1)「遠い笛遠い波」
(1)「あなたの好きなもの」
(1)「天の川を見下ろしながら」
(0)「カレイなる一族」
(0)「神様の帰郷」

()内の数字は審査員投票数

最終審査

皆田:候補作全体を見渡して、みなさん書くのは上手だと思うんだけど、どれも一本調子で。もうひとつ何かを足してやらないと、ドラマとしての膨らみに欠ける。

香月:応募数は増えたけど、今年はレベルが落ちてるような気がします。

副島:今年はぜんぜん駄目です。5枚で済む話を退屈なセリフで15枚に引き伸ばしてるようなのばかり。今日の分(最終選考候補)でこれだから、一次審査を読んだ人のご苦労が忍ばれます。

盛多:大賞なしというのは何のための審査か分からない、と毎年言ってきたけど、今年は正直悩みますね。

「最後の一歩」

皆田:柿農家のお話なんですけど。就活に疲れた息子が故郷に帰ってきて、お父さんに叱咤激励されて戻っていくという。お父さんが病気で倒れたって出来事はあるんですけど。それだけじゃなくて、15分とはいえ物語にもうひとつ、なにか流れがあったほうが良かったと思います。

香月:シンプルなわけね。

皆田:流れがひとつだと、時間も半分で終わってしまう。

副島:ありきたりな設定だし、作りも退屈。

皆田:お父さんが喋り過ぎ。言ってることは全然間違いのないことばかりだけど、ドラマとしては心に残るセリフが欲しい。セリフをもっとブラシアップしてもらいたかったですね。

「カレイなる一族」

皆田:夢を持って飛び出した彼氏が故郷に帰ってくるって話。発想は面白いし、好きなんですけど。これも話が一本調子なんですよね。

香月:タイトルはどう?

皆田:ぼくだったら「カレイな一族」にしちゃいます。

香月:「カレイなる」だと、妙に持って回った重さが出てくる。

皆田:オリジナル(山崎豊子の小説)のイメージもありますからね。

「天の川を見下ろしながら」

副島:ほとんどセリフばっかりで、私小説の世界です。但し、小説として読んだとしても、もっと言葉の機能を意識して、磨きをかけなきゃ作品にはならない。とても丁寧に書かれてはいますけど。

香月:育ちの良いお嬢さんが品の良いドラマを書いたって感じでね。

盛多:お父さんとお母さんがいなくて、お婆ちゃんだけがいるんでしょ、家族構成がどうなってるのか、気にかけて読んだんだけど、よく分からない。

「あなたが好きなもの」

皆田:気難しいお父さんで、ろくに話もしたことがなかったから、親父が好きだったものを棺桶に入れられなかったって話。この手のものは有りがちなんですが。

盛多:父親との関係が知りたいんだけど、見えてこない。そこが一番の欠点。親父が口煩いってだけで終わってる。

香月:親子の確執が出ていれば、すごく良かったと思う。

副島:疎遠になってた親が死んで、火葬場で亡父を偲ぶってだけの話でしょ。煙草をきっかけに火葬場の職員さんと会うんだけど、なんのために会ってるのか分からない。

盛多:一緒に煙草吸ってるんだけど、最後まで絡んでくるものがないんだ。

副島:何人も何人も事務的に見送っている人ならではのセリフとか、ここでなにか作ってるのかと思ったんだけど、一切なかったですね。

「遠い笛遠い波」

香月:この作品のセリフは、ぼくはぜんぜん買わない。

盛多:全部説明ですもんね。

副島:すごくまどろっこしい、かったるい。ネタ明かしの説明も面倒くさい。もっと簡潔に運べなかったのか。ただ、フルートの使い方がラジオドラマ的だったので三次に残しました。

香月:フルートは強く印象に残ってるけど。認知症のお婆さんがあんなに長いセリフを言えるのか疑問。認知症というのは論理が飛ぶから、2行以上のセリフは言えないでしょう。

「蓮池前のバス停にて」

盛多:天国に行って、「まだ早いよ」って言われて戻ってくる話だけど、こういった発想って多いのかな?

香月:陳腐だね。

副島:現世に戻ってからのエピローグが二段になっていて、長いと感じました。

「母の弁当」

皆田:話はほんわかして良かったんですが。

香月:ぼくは好きなんだけど、前半がかったるい。

皆田:弁当持っていかない娘が言い訳しないほうが良かった。朝のドタバタで忘れたフリしていったほうが、ドラマのふくらみというか、アッサリ言ったせいでネタバレしてる。

盛多:最後のモノローグが気に入らない。「食べなかったオカズの味を忘れません」ってどういう意味なんだ、これ。泣けないぞ。

副島:2ちゃんねるの超有名なコピペに似たような話があって、そっちのほうが出来がいい。

香月:3年くらい前のNHK杯で入賞した高校生のドラマにも「母の弁当」ってあったね。

盛多:こういうパターンって多いの?

副島:2ちゃんねるに専スレも立ってたくらいですから。

審査会c

「私のしぼう動機」

皆田:居酒屋の大将が死神で、着想はすごく面白いけど、ちょっとコントっぽい。もう一本筋があったなら、ドラマとしての膨らみ出たんじゃないかな。

副島:死亡動機を履歴書に書こうとしたけど書けなくて、生きる勇気をもらって戻って来ました、ってとこで終わってもよさそうなものだけど。もうちょっと面白く作れたんじゃないのかなあ。

香月:前半がクドすぎて、構成的にアンバランス。8ページくらいまで酒場のワンシーンなんですよ。

盛多:着眼点は面白いと思います。

香月:セリフは齟齬なく書けてるけど。これはラジオでは作りにくい、言葉(同音異義語)が伝わらないです。

「娘とスマホとオレンジジュース」

皆田:中学生の娘はスマホが手に入れられるのかっていうドキドキ感と、お父さんは過去にいったい何があったのかって興味と、筋が2つキチンと見えていたところを評価します。

副島:メインは父親の思い出話でしょう。なぜアタマとケツにスマホの話を挿れたのか分からない。中学生の娘がスマホ欲しいって話は、メインのストーリーにリンクしてないじゃないですか。なぜ父親の話1本で押さなかったのか。

盛多:ただ、上手いんですよ。セリフも熟れている。

香月:上手さは天下一品。

皆田:文章にシャープさが欠けている気もしますが。

香月:感性に満ちた若い人の言葉にはエッジが立っているじゃないですか。それがちょっと不足している。でも全体的な評価は高い。

盛多:現在、過去、大過去、過去、現在の入れ替え方が、上手いって言えば上手いんですが、なんか面倒くさい。

副島:まどろっこしいんです。(原稿を)読んでるから辛うじて分かるけど。

香月:時間を跨るような展開は、あまり多用しちゃいかんのです。特にラジオの場合は。

副島:ナレーションで説明しながらストーリー展開してるところが安易だし、あまり巧いとも思えないんですが。父親の馴初めはいい話で、好きではあるんですけどね。

盛多:ウェイトレスが10歳の男の子を家に連れて帰るじゃないですか、そのあと男の子は警察に保護されている。ということは、ウェイトレスの女の子は逮捕されている可能性があるわけで、書かれてないけど、そのへんに見えてくる暗さが好きなんですよ。

香月:男の子がどうしてぼくを連れていくのって訊いたら、「何年か経って、腐った目をしたあんたの顔を新聞で見るのが嫌だから」って言うじゃない。善意でやってるんじゃないんです、そういう善意とかを超えたところの人間関係というか、若干哲学的なところが女の子にはあるんですね。

副島:病んでるんです。

盛多:そう、そのあたりが好きなんですよ。

香月:中学生がスマホを手に入れて、いちおうハッピーな結末にはなってますが、スカッとしないんですよね。

「月に泣くふたり」

皆田:日本列島は女性の身体だって言う夫婦の話。奥さんが小倉出身なんですが家出して、新しい人生を歩むために本州から九州へ、関門トンネルを歩く。横になって寝ると、ちょうど産道のあたりが関門海峡だと。比喩がとても上手だと思いました。

副島:比喩の部分だけが浮いてて、男と女が素で話してる部分が面白くない。ふたりの個性がまったく感じられない。

香月:面白いのは日本列島のくだりだけですもんね。

副島:比喩のところは作者のセリフですよ。で、男女のやりとりのところは、ほとんど人物が作られていない、考えられていない。

香月:だから入り(導入部)がかったるい。地図の話が出たあとの後半は、テンポが出てくるけど、そこに持ってくまでがかったるい。

盛多:人物が見えないんですよね。ただ、この作者の世界観は印象に残る。

副島:トンネルの中でふたりっきりの会話というのが、ラジオっぽい。声に微かにリバーブがかかったり、途中トラックの通過する音とか入れたりすると、いい雰囲気が作れそうな気がする。

盛多:最後のセリフはなんだろうな、「ねえ、月が出てる」「ああ、泣いてる」って。こんな終わり方あるのか。

香月:それで、そこからタイトル持ってきてる。酷いね、なんか田舎芝居みたいじゃないですか。

審査会d

副島:「月に泣くふたり」は、2回目のプロポーズみたいな話でしょう、関門トンネルを歩きながら夫婦の次のステージに踏み出すっていう。あらすじだけ抽出すれば平凡。だけど、ひたすらトンネルを歩く話は、音に集中して耳を傾ける、ラジオドラマの機能にあったシチュエーションだと思います。

盛多:ラジオの効果を考えた場合、「月に泣くふたり」の大賞も考えなきゃいけないんだろうけど……そうしたいんだけど、作品のレベルがそこに達していない。

香月:志の高さというか、文芸チックな感じがしないでしょう。軽いんですよ。

皆田:好きなのは「月に泣くふたり」ですが、これを大賞にするのは冒険すぎる。普通に考えれば「スマホ」でしょう。

副島:他に対抗できる作品がないですから、「スマホ」でいいんじゃないですか。飛び抜けて優れた作品とは思えませんが。ただ、このなか(候補作全体)では、いちばん人間を見る目がしっかりしたシナリオではあります。

香月:大人のタッチですもんね。文学的なムードがある。

盛多:(制作で)難しいのは、回想が階層になってるところですね。しかも、それらをナレーションでつないでるから、実際のセリフと混乱しそうなところが難しい。

香月:作るのに気が重い作品ですね。

最終選考
2012年9月30日、福岡市中央区天神の天神エコール
審査委員: 日本放送作家協会九州支部 ドラマ部会
盛多直隆皆田和行副島 直香月 隆

第6回 南のシナリオ大賞 結果発表

南のシナリオ総評

審査員:盛多直隆

今回で6回目を迎えた南のシナリオ大賞は、応募数数が130編を数えました。まずは、応募されてきた方々の熱意に感謝致します。

大賞は、原雅裕さん作『娘とスマホとオレンジジュース』に決まりました。ストーリーの運び方は、他の応募者の方々より抜きんでたものがありました。大賞に相応しい作品でした。

さて、翻って他の作品を見てみると、小粒になった感じがします。
作家が持つべき独自性があまり見られず、物語が安易に展開している感がぬぐい去れませんでした。もっと、視点を変え、取材もする必要性があるでしょう。

では、来年も新しい作品に出会えるのを楽しみにしています。

早く書ける、空気が書ける

南のシナリオ大賞審査員のひとり

今年、本コンテストへの初めての応募者は新宿区のA(男性)さん。作品は「ハーフムーン」。5月末に作品が送られてきました。亡くなった幼馴染の婚約者に声がそっくりの男がなじみのバーに現れ、その男にふとよろめこうとする女心を描いた佳品。5月到着の作品はその1編でした。
6月になって4編が到着しました。うち2編が同じ人からの応募です。杉並区に住むN(女性)さん。作品は結構読めました。阿蘇の野焼きを題材にしたものと猫屋敷を描いた民話っぽいドラマでした。
7月は3編。まだまだの作品でしたが印象にのこりました。
早く到着した作品にはふしぎな愛着を覚えます。

その後20日間ほど到着休止期間があって、8月10日からほぼ連日、応募作品が到着しました。そのかず122編。かくて合計130編の応募となったわけです。
昨年の応募数は89編でしたから、今年はかなり増えました。

さて応募作品の質は?
毎年、作品のできが軽妙になっています。全体的にみて破綻が少なくなったのですが、その反面、軽くなってきたといわざるをえません。
2回も3回も読み返して作者の世界を味わってみたいという作品が少なくなってきたのです。

昨今、「空気」という言葉がはやっていますが、私たちは作者独自の空気に触れてみたいのです。空気に飢えているのです。
審査の仕組みをばらすわけにはいきませんが、巧みに書かれていてもソク高得点には結びつきにくい、しかし空気を持った作品は得点に直結します。
あなたの世界を、あなたの空気を描きましょう。それが効率よい高得点獲得のコツなのです。
早く書ける、空気が書ける――これはプロになっても要求されるライターの力量です。

第6回南のシナリオ大賞審査に臨んで

審査員:皆田和行

聴く者を惹きつけ、魅了させるドラマ作りは難しいものです。
しかし応募者のみなさんは、それぞれに果敢にチャレンジされています。

聴取者が魅了するドラマとは……。
誤解を恐れず私見を述べさせていただくとすれば……。
ドラマは登場人物の変化です。
変化がなければ、共感も感動も与えられません。
ハートウォーミングなドラマなのか、ミステリーなのか。
どういうジャンルであっても、たとえ15分であっても、2つくらいの軸が絡み合い、完結へと向かうよう構成するのが望ましいと思います。
簡単に言えば、この主人公はこの先どうなるんだろう?
この話はこの先どう展開するんだろう? と思わせれば勝ちです。
以上のような観点から、今回はドキドキさせられる作品が少なかったように思われます。

また技術面で、ラジオのシナリオになっていないもの、ラジオでは表現できない作品がありました。効果音を有効に使えば、夏から冬に、現在から過去へ移ることも可能です。
オーディオドラマの特性を贅沢に存分に活かして欲しいと思いました。

最終選考に残るラジオドラマ脚本の書き方

審査員:副島 直

審査会の日は、朝から忙しい。
なにしろ10数編の候補作を全部読んで、その日のうちに入選作を決めなければならない。ぼやぼやしてたら明日になってしまう。
審査員は会場に入ると挨拶もそこそこに、各自、テーブルに積まれた10数編のシナリオを、貪るように読み始める。

私の場合、あらすじ(梗概)は読まない。
タイトルだけ確認して、いきなり本編から読み始める。

あらすじがつまらなかったものは本編を読まないで済むのなら読んでもいいが、最終選考の原稿をそんな粗末に扱うわけにはいかない。
あらすじがどんなに面白く書かれていても、審査の対象は本編なのだから、読むだけ無駄だ。肝心なのは本編の出来不出来であって、あらすじなどはどうでもいい。

なにしろ審査会は忙しい。無駄は極力省くに限る。

節約したぶんのエネルギーを集中して、本編のシナリオを読む。
これは第1ページから最後のページまで、しっかり読む。
面白くてもつまらなくても、全作品、最後まで読む。

作品の出来が良ければ、面白ければ、これはたいへん楽しい作業だ。
しかし、つまらなかったら、かなりの苦行になる。
それでも全作品、最後まで読む。
審査という権力を行使する以上、作品をきっちり読むのは、審査員として最低限の義務だ。

作品が面白いか詰まらないか、審査員は最初の1ページ目で暫定的に判断をくだす。
始まりが面白ければ、審査員は期待と興味でグッと身を乗り出し、作者が仕込んだドラマ世界にすんなり入っていく。
逆に詰まらなければ、非情なまでにあっさりと、文字を目で追うだけの義務モードにスイッチしてしまう。

さて、審査員が楽しんで積極的に読む原稿と、義務で仕方なく最後まで読む原稿。
どちらが好意的に迎えられるか、ここに書くまでもないでしょう。

コンクール応募原稿は最初が肝心

シナリオに文学的要素が含まれていることは否定しませんが、どちらかと言えば、ドラマは文学より音楽に近い。

名曲と呼ばれる音楽は、スローなバラッドであれ軽快なテンポのポップスであれ、最初のワン・フレーズから聞き手に強い印象を与えている。
ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」が広く多くの人々に名曲として認知されているのは、その出だしが非常に分かりやすく強烈だからでしょう。

最初はまだろっこしかったけど、後半どんどん良くなった。
それでは駄目です。
面白いドラマは最初っから面白い。

当たり前のことだけど、ラジオドラマはテレビドラマとは違います

もしあなたがコンクールに応募するためにラジオドラマ脚本を書いていたとして……セリフと効果音と音楽だけでは表現困難な場面があったとしたら、あなたが書いているシナリオは、ラジオドラマに向いていない題材です。
もしあなたがラジオドラマ脚本を書いているとき……「この場面を映像で表現できたら簡単なのになあ」と感じたなら、それはテレビや映画の映像シナリオとして書き直したほうが、きっと上手くいくし、良い作品に仕上がります。

目に見えるもの、視覚情報を表現しようとしても、ラジオドラマでは無理に決まってます。
無理を承知で書こうとするから、説明セリフの羅列になってしまう。

では、ラジオドラマで表現できるものは何かというと……
視覚では認識できないもの全般。

例えば「人の心」などは、ラジオドラマが最も得意とするものです。
浅田次郎の「鉄道員」が大ヒットして以来、幽霊が出てくる応募シナリオがやたら増えましたが、「幽霊」もラジオドラマが昔から得意としていたものです。
これら目に見えないものは、無理して映像化するよりも、音声情報だけ与えて、残りはリスナーの想像力に委ねたほうが、数段効果的です。

マイクル・クライトン原作の「ジュラシック・パーク」は、スティーヴン・スピルバーグ監督で映画化されましたが、映画が日本で公開される少し前に NHK-FM(「青春アドベンチャー」)でラジオドラマ化されています。
当時の最先端CGテクニックを駆使した映画は、ものすごいヴィジュアル効果で話題になり大ヒットしましたが、恐竜に追いかけられる、襲われるときの恐怖心は、ラジオドラマのほうがより迫力があり、巧く描けていたと思います。

ラジオとテレビの違いは、制作の面からみると歴然としています。
美術(セット・大道具・小道具)、衣装、キャメラ、照明等にかかる制作費が、ラジオドラマにはありません。
だから、予算を気にかける事なく、どんな題材でも扱えるという広大無辺な自由がラジオドラマにはあります。

テレビドラマに出来てラジオドラマに出来ないものは、映像表現だけ。
逆に、テレビドラマでは出来ないけどラジオドラマに出来るものは、無限にあります。
なぜなら、人間が持っている想像力には限度が無いからです。

ラジオドラマの自由をはちきれんばかりに謳歌してる、リスナーの眠っている想像力を覚醒させる、これぞラジオドラマだ! と呼べるような作品を待望しています。

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